本施設は広島県竹原市に立地し、教職員は教員4名、技術職員1名で構成されています。スタッフ数は限られていますが、教育研究の実績は世界的に顕著で、文部科学省が「教育関係共同利用拠点(名称:里海の持続的利用およびレジリエンスを学ぶ教育拠点)」に選定されおり、教育拠点としては3期目を迎えています。
国内外の学生、研究者らの年間延べ利用者は3,000人を超え、非常に高い活動実績があります。
研究面では、海藻類、海洋プランクトン、共生生物の系統分類・生理生態およびカブトガニや干潟生物の保全生態で世界的な研究業績を挙げており、国内外の学会などで高い評価を得ています。
ブルーカーボンの要であるCO₂固定で重要な機能を有し、さらに人間社会に様々な有用性のある海藻類の基礎研究および海洋生態系の基礎生産を担う動物プランクトン、魚介類増養殖の脅威となる寄生生物の系統分類・生態において、顕著な業績を世界に向けて発信し続けています。
最近の主な業績としては、藻場のCO₂貯留量の算出に貢献するサンゴモ類の成長特性の解明、甲殻類起源のデトリタスに付着する発光バクテリアと動物プランクトンの栄養関係やウオジラミ類の生活史の可変性の解明などが挙げられます。
以下に最近の代表的な論文を挙げます。
Hosoi T, Kato A (2023) Effects of seawater temperature and irradiance on the growth of sporelings of Amphiroa cf. zonata and Corallina berteroi (Corallinales, Rhodophyta) in Japan. Phycologia, 6, 585–592.
Hirano K et al. (2024). Isolation and characterization of bacteria from the gut of a mesopelagic copepod Cephalophanes reflugens (Copepoda: Calanoida). J Plankton Res, 46, 48–58.
本臨海実験所は、1933(昭和8)年6月に、旧制広島文理科大学附属臨海実験所として開所した広島大学の附属施設の中でも、最も歴史のある重要な教育研究施設です。
1949(昭和24)年5月に、現在の新制広島大学が発足すると、理学部附属向島臨海実験所となりました。2023(令和5)年4月より、瀬戸内CN国際共同研究センターの新設に伴い、ブルーイノベーション部門の臨海実験所に改組されました。
学内の理学部や他学部の実習に加え、文部科学省の教育関係共同利用拠点の一つとして、初等・中等教育から高等教育・リカレント教育まで多種多様な幅広い国際的な教育研究活動を実施しています。
私たちヒトの再生能力は著しく限定されています。一方、海に棲む半索動物ギボシムシは、ヒトなど背骨のある動物(脊椎動物)に近縁ながらも、ちぎれた体から完全に再生することが可能です。このようなギボシムシの頭部再生について調べたところ、万能細胞としても知られる iPS 細胞を人工的に作る際に重要な「リプログラミング因子」に類似した因子が、再生中の細胞分裂が盛んな部分で検出されました。脊椎動物の再生では、なぜかこのリプログラミング因子は活性化しません。したがって、ギボシムシでその再生機構の詳細を解明することで、今後ヒトなど脊椎動物の再生医療の理解と発展に繋がることが期待されます。
宮島自然植物実験所は、世界遺産に登録された広島県廿日市市宮島町にある広島大学の施設です。
宮島島内の大元公園から上室浜に至る室浜砲台跡の国有地を利用した施設で、瀬戸内海の自然環境がよく保たれた宮島の自然を活用して、植物や生態系、さらにそれらの保護や保全に関する教育・研究活動を行っています。
また、一般を対象とした植物観察会の開催や広島大学デジタルミュージアムを通じた情報発信、地元の教育機関や行政機関、団体、企業との連携や情報提供など社会とつながる活動も行っています。このような活動を通じてSDGs実現に貢献しています。
蓄積されている標本やデータを活用し生物多様性の解明とその保全を行っています。また、新しい技術を取り入れ、分子系統解析やDNAバーコーディングを行うとともに、植物の葉緑体ゲノムの決定や環境DNAを使った植物食動物の食性解析を行い、植物に関する化学物質や土壌微生物と植物の相互関係を明らかにし移入種の侵入・定着を抑止するための研究を行っています。
さらに災害跡地の経年変化を明らかにするとともに、生物多様性に配慮するため在来性種苗を利用した緑化も行っています。
国際共同研究として、現在も残る南北格差を標本の情報にもとづいて明らかにし、その是正に向けた提言も行っています。